うちの母親


 狭霧の母は看護師をやっている。おそらくその道二十年以上行くベテラン……のはず*1


 で、さすがに自分の母親と思うあたり、あれですが、時折喋っている言葉がおかしい。そりゃもう。分からない言語が家の中を舞っていたものだ。


 幼少の頃、口の中が痛くて母親に見せたときに言われた台詞。


「ああっ。アンタ、アフタが出来てるやん」


 そうか。この妙にズキズキ響く痛い物は“アフタ”と言うのか。


 幼い頃の狭霧さんは妙に素直だったのでそう信じ込みました。


 そして、まぁおおかたの予想を裏切らず。


 友達の前で

「アフタが出来て痛いに」
「……アフタ?」

 と妙な顔をされたわけです。


 その疑問は20年間、ずっと悩んでいました。もしかして母親の特殊言語で口内炎のことを“アフタ”って言うんじゃないのか*2


 で、それが氷解したのは自分が就職してからでした。
 仕事の関係で医学のテキストを読んでいたのです*3


 アフタ性口内炎:口内に出来た傷口に細菌などが入り、化膿すること。刺激を受けると痛みを発する


 ああっ!!Σ( ̄□ ̄;;)


 母上っ!!
 略し方がおかしいとか、でも僕が間違っていたとか、そう言うことはどうでもいいから。


 子供相手に医学用語を使わないでください○| ̄|_*4



 そして。
 いま。


 その“あふた”がめっさ痛いわけです・゜・(つД`)・゜・。
 犬歯が何故か人より鋭角なため、良く口の中に刺さるんですっ!
 口の中に歯形が残ってビビりました!
 醤油とか唐辛子とか食べれません! 痛みと闘いながら歯を磨いています!


 ……ああ、回復魔法が使えたら……。

*1:母親の年齢を知らない親不孝者

*2:外国語に弱い。例えば洋画を見ていても俳優の区別がつかないとか良くある

*3:「仕事ですから」。保健体育とかも仕事で覚えましたよ。……嘘です。家にそう言う本がたくさんあり、一度も親に「赤ちゃんはどうやって生まれるの?」と尋ねない人でした。……でした(血涙)

*4:風邪薬も「風邪薬」じゃなくて「(薬品名)」で言う素敵なお母様でした(笑)。